結論:「何個から」と聞かれると、必ずずれる

化粧品OEMの最小ロットを尋ねられたとき、「○個から」と答えると、後で必ず食い違いが起きます。理由は単純で、化粧品の最小ロットは個数ではなく、内容液の製造ロット(kg)で決まるからです。

現場では、内容液50kg程度が現実的な起点になることが一般的です。これは乳化・撹拌設備の最小バッチ量によるもので、これを下回ると撹拌が均一にならず、ロット間で粘度や外観がばらつきやすくなります。

つまり正確な答えは、次の順序で決まります。

内容液の最小製造ロット(kg) ↓ 充填量で割る 本数の目安 ↓ 容器・化粧箱の最小ロットと比較する 実質的な最小ロット(3つのうち最大のもの)

1. なぜ「個数」で決まらないのか

製造設備に最小バッチがある

乳化設備は、容量いっぱいまで使うよりも、ある程度の量を入れたほうが撹拌効率が良くなります。装置の最小バッチ量を下回る注文は、品質の安定性を担保できないため、そもそも受けられない、というのが実務的な制約です。

充填ロスが必ず出る

製造した内容液のすべてが製品になるわけではありません。配管への残留、充填機の初期ロス、検査用の抜き取りなどで、数%が失われます。50kg仕込んで50kg分の製品ができる、ということはありません。

容器と化粧箱は別のロットで動く

内容液を作る工場と、容器を作る工場、化粧箱を刷る工場は別です。したがって最小ロットも3つ別々に存在します。この3つが揃わないと、製品として完成しません。

2. 50kgを本数に換算する

内容液の充填量によって、同じ50kgでも本数は大きく変わります。

1本あたりの内容量理論上の本数充填ロスを見込んだ目安
30g約1,670本約1,580〜1,620本
50g約1,000本約950〜970本
100g約500本約475〜485本
150g約330本約315〜325本
200g約250本約235〜245本

計算式は 50,000g ÷ 1本あたりの内容量 です。ロス率は3〜5%を目安にしています。

ここで重要なのは、「最小ロットを小さくしたいなら、1本あたりの内容量を小さくする」という方向があるという点です。同じ50kgでも、30gの美容液なら約1,670本、200gのクリームなら約250本になります。小ロットで始めたい場合、内容量の設計は数量に直結します。

3. 容器と化粧箱のロットは別建て

容器

容器の種類最小ロットの考え方
既製容器(標準品)比較的小さく設定されていることが多い。色・印刷の有無で変わる
既製容器+追い印刷印刷工程が加わるため、印刷単位でのロットが発生する
専用容器(新規金型)金型費が別途発生し、最小ロットは内容液を上回ることが多い

化粧箱

化粧箱は印刷物なので、製版の単位でロットが決まります。新規に版を作る場合は、その版を使い切る前提の数量が求められることが一般的です。逆に、既存の版を流用できる場合は、かなり小さいロットから対応できる可能性があります。

実質の最小ロットは「最大値」

内容液のロット:50kg → 100g×約500本 容器のロット :3,000個〜 化粧箱のロット:5,000枚〜 ──────────────────────── 実質的な最小ロット:5,000個分

このように、いちばん大きいロットが全体を決めます。内容液だけを小さくしても、化粧箱のロットが大きければ意味がありません。だから最初に「3つのロットを並べて確認する」ことが重要です。

参考:ここに挙げた数値は考え方を示すための例です。実際の最小ロットは、処方内容・容器の形状・印刷方式・工場の設備によって異なります。個別のお見積りでご確認ください。

4. 小ロットで始める4つの方法

最小ロットを下げたい場合、次の順序で検討すると現実的です。

方法1:既製容器+オリジナル化粧箱

もっとも取り組みやすい組み合わせです。容器は既製品を使うことで金型と容器ロットを回避し、化粧箱とラベルでブランド感を出します。

方法2:既製品+日本語ラベルから始める

内容液も容器も既製品を使い、日本語ラベルとパッケージだけを自社仕様にします。OEMではありませんが、市場検証の手段として最も低リスクです。反応を見てから専用処方に移行できます。

方法3:1バッチを複数SKUに分ける

50kgの内容液を、色違い・香り違いで2〜3のSKUに分けて充填します。1回の製造で複数商品を揃えられるため、初回のラインナップを作りやすくなります。ただし、切り替え時のロスと、SKUごとの容器・化粧箱のロットは別途発生します。

方法4:初回は1SKUに絞る

逆の発想ですが、最も成功率が高い方法です。売れ筋を1つに絞り、その1つを確実に作り切るほうが、複数SKUを薄く広げるより学習が早くなります。

5. よくある誤解

誤解実際
「50kgと聞いたので50kg分の商品ができる」充填ロスがあり、実際の本数は数%少なくなる
「容器も内容液と同じロットで作れる」容器・化粧箱は別工場。ロットも別建て
「小ロットなら単価も比例して下がる」段取り費用は数量に関係なく発生するため、小ロットほど単価は上がる
「サンプルが良ければ量産も同じ」サンプルは手作り相当のことがあり、量産とは条件が異なる
「最小ロットはどこも同じ」設備・工法・時期によって変わる。同じ品目でも見積ごとに確認が必要

よくあるご質問

Q. 化粧品OEMの最小ロットは何個ですか? A. 個数ではなく、内容液の最小製造ロットで決まります。業界では内容液50kg程度からというのが一般的な目安です。充填量により本数は変わり、50kgの場合、30gなら約1,670本、100gなら約500本が目安になります。実際の条件は処方内容と設備により異なりますので、個別にお見積りします。

Q. 100個だけ試作してもらうことはできますか? A. 専用処方での製造は難しい場合がほとんどです。まずは既製品に日本語ラベルやオリジナル化粧箱を組み合わせて市場検証し、反応を見てから専用処方に移行する進め方をご提案しています。

Q. 内容量を小さくすれば、本数を増やせますか? A. はい。内容液の重量が同じであれば、1本あたりの内容量を小さくするほど本数は増えます。ただし容器と化粧箱のロットは別建てのため、全体の最小ロットはそれらとの比較で決まります。

Q. 容器や化粧箱のロットだけを小さくすることはできますか? A. 既製容器と既存の版を流用できる場合は、小さくできる可能性があります。新規の金型・製版が必要な場合は、それぞれの単位でロットが発生します。

Q. リピート発注時に、また同じ最小ロットが必要ですか? A. リピート時は開発支援費用が再発生しませんが、製造ロットの考え方は同じです。前回の仕様を基準に、原料ロットや単価変動を再確認したうえで量産に移行します。

まとめ

  • 化粧品OEMの最小ロットは「個数」ではなく、内容液の製造ロット(kg)で決まる
  • 業界では内容液50kg程度が現実的な起点。充填量により本数は大きく変わる
  • 容器・化粧箱のロットは別建て。実質の最小ロットは3つのうち最大のもの
  • 小ロットで始めたい場合は、既製容器+オリジナル化粧箱、または既製品+日本語ラベルから

著者について

itsushou(GAMU 中国OEM・商品開発担当) 中国での商品開発・OEM生産・工場との調整業務に携わり、実務経験をもとに中国OEMに関する情報を発信しています。

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