結論:化粧品OEMは「5つの工程」を1本の線として設計する

化粧品のOEMは、処方だけ、容器だけを個別に決めていくと、必ずどこかで噛み合わなくなります。内容液の粘度と容器の吐出量、容器の口径とラベルの位置、化粧箱の納期と充填のスケジュール——これらはすべて連動しています。

工程は次の5つに整理できます。

#工程この工程で決めること成果物
1処方開発(内容液)剤型・有効成分・香り・色・粘度処方書・試作サンプル
2容器・ポンプ容量・口径・吐出量・材質・キャップ確定した容器と付属部品
3外装(化粧箱・ラベル)材質・印刷方式・法定表示の項目版・入稿データ・確定ラベル
4検品(QC)検査項目・抜取数・合否判定基準検品基準書・検品報告書
5輸送・通関輸送モード・課金重量・書類パッキングリスト・インボイス

重要なのは、1→5を順番に完成させるのではなく、工程2と3を工程1と並行して進めることです。容器が決まらないと充填試験ができず、化粧箱の版が決まらないと量産の着工ができません。

工程1:処方開発(内容液)

最小ロットは「個数」ではなく「kg」で決まる

化粧品の製造は、乳化・撹拌設備の最小バッチ量が起点になります。業界では内容液50kg程度からというのが一般的な目安です。50kgを下回ると、撹拌が均一にならず、ロット間の品質が安定しにくくなるためです。

50kgが実際に何個分になるかは、1本あたりの充填量で決まります。

1本あたりの内容量理論上の本数充填ロスを見込んだ目安(3〜5%)
30g約1,670本約1,580〜1,620本
50g約1,000本約950〜970本
100g約500本約475〜485本
150g約330本約315〜325本
200g約250本約235〜245本

※上記は計算上の目安です。実際の最小ロットは処方内容・設備・容器によって異なりますので、個別のお見積りでご確認ください。

試作で確認しておきたいこと

  • 剤型の再現性:同じ処方で2回作って、粘度と外観が揃うか
  • 香りの再現性:香料のロット差が許容範囲に収まるか
  • 経時変化:高温・低温・室温で一定期間置いた後の分離・変色・粘度変化
  • 容器との相性:内容液が容器材質に与える影響(変質・色移り・におい移り)

工程2:容器・ポンプ

容器は内容液と同時に決める

容器は「見た目」ではなく、内容液の物性と使い勝手で選びます。粘度が高い内容液に細いノズルのポンプを組み合わせると、最後まで吸引できません。逆に粘度が低いと、勢いよく出て使いにくくなります。

確認項目内容液側の条件容器側の条件
吐出量1回の使用量ポンプの1押し吐出量
吸引性粘度・流動性チューブ先端の形状・長さ
密閉性揮発性成分の有無キャップ・パッキンの構造
材質適合pH・油性成分樹脂・ガラスの耐性
表示法定表示の必要項目印刷可能な面積・曲面

既製容器と専用金型の分岐

既製容器を使えば、金型費とその製作期間を省略できます。専用形状にすると差別化はできますが、金型費用と最小ロットが別途発生し、容器の最小ロットが内容液の最小ロットを上回ることが少なくありません。

容器の選定実務は化粧品容器の調達で確認することで詳しく扱っています。

工程3:外装(化粧箱・ラベル)と法定表示

表示の責任は日本側にある

化粧品を日本で販売する場合、薬機法に基づく表示の責任は日本の販売主体が負います。中国側の工場は、指定された内容を正確に印刷する立場です。したがって表示内容は日本側で確定させてから入稿する必要があります。

版と入稿データ

項目決めること
印刷方式オフセット/グラビア/シルク/デジタル
色指定Pantone・DIC番号(画面の色では合わせられない)
新規製版か、既存版の流用か
入稿データ量産用の完全データか、暫定レイアウトか
最小ロット製版・印刷のロットは内容液と別建て

化粧箱の依頼内容の整理方法はオリジナル化粧箱・パッケージの依頼書にまとめています。

工程4:検品(QC)

検査項目と合否基準を先に合意する

検品は「良さそうかどうか」ではなく、事前に合意した基準に達しているかで判定します。基準を先に決めていないと、不具合が見つかったときの交渉が長期化します。

検査項目の例:外観(キズ・バリ・異物混入)、員数、品番(SKU)、色調、印刷精度、表示ラベル、充填量、漏れ、ロット番号の刻印。

抜き取り検査の判定基準の例

以下は「印刷加工付きガラスボトル」における基準の一例です。

  • 検査単位:マスターカートン1箱(500個入)あたり、50個を無作為抽出
  • 致命的欠陥(Critical):1個以上でロット不合格(破損、クラック、著しい変形、法定表示の誤記等)
  • 重欠陥(Major):3個以上でロット不合格(印刷の剥がれ・位置ズレ・文字かすれ・塗装ムラ等)
  • 軽微な欠陥(Minor):5個以上でロット不合格(使用上支障のない微細な擦れ傷等)

基準に達したロットは不合格として受領を拒否し、工場へ返品または全数手直しを要求します。実際の検査数量と判定基準は製品カテゴリーごとに個別設定します。詳細は中国出荷前検品の実務設計をご参照ください。

工程5:輸送・通関

化粧品の輸送は個別に確認

化粧品には液体を含む製品があり、輸送時に敏感貨物として扱われる場合があります。一般貨物向けの運賃表や到着日数の目安は、このような貨物には適用できません。引受可否、利用可能な輸送手段、所要日数、運賃は、成分・包装・数量・重量・仕向地を踏まえ、運送会社の確認後に案件ごとにご案内します

出荷前に検査機関へ MSDS(製品安全データシート) の発行を依頼し、実際の輸送手段に応じて輸送条件鑑定書など追加書類の要否も確認します。MSDS の検査・発行費用は個別にお見積りします。MSDS の取得だけで輸送可能になるとは限りません。輸送条件と費用は運送会社の審査結果および正式なお見積りで確定します。

工程をつなぐ3つの管理

5つの工程を分断しないために、次の3つを最初から仕組みとして決めておきます。

  1. 承認マスターサンプル(ゴールデンサンプル):最終合意した現物を双方で保管し、量産時の比較基準とする
  2. 改訂履歴:リビジョン番号・更新日・変更点を記録し、工場がどの版を参照しているかを同期させる
  3. 発注単位の記録:確定仕様・進捗・検品写真・出荷情報を発注ごとに一元管理する

後戻りが起きやすい5つの接点

接点起きること予防策
処方 → 容器粘度に合わず最後まで出ない充填試験を容器確定前に行う
容器 → ラベル曲面に収まらず表示項目が入らない展開図で表示面積を先に確認する
外装 → 量産版の確定が遅れて着工できない入稿データの確定日を工程表に入れる
検品 → 出荷基準が曖昧で合否が揉める検査基準書を発注前に合意する
輸送 → 納品液体・敏感貨物の引受条件が未確認で出荷に影響するMSDS などの書類を早めに準備し、輸送手段・所要日数・費用を個別に確認する

よくあるご質問

Q. 処方から開発する場合、最小ロットはどのくらいですか? A. 内容液の最小製造ロットが起点となり、業界では50kg程度からというのが一般的な目安です。充填量によって本数は変わります(50kgの場合、30gなら約1,670本、100gなら約500本が目安)。実際の条件は処方内容と設備により異なりますので、個別にお見積りします。

Q. 容器や化粧箱だけを依頼することはできますか? A. はい。内容液は既製品を使い、容器・化粧箱・ラベルだけをオリジナルにする進め方も承ります。

Q. 既存の取引先工場がある場合、一部の工程だけ依頼できますか? A. 中国語での商談・発注代行、進捗管理、出荷前検品、輸出梱包、国際物流手配など、必要な工程のみを個別にご相談いただけます。

Q. サンプル段階で何を確認すべきですか? A. 色・香り・粘度などの官能評価に加え、容器適合(吐出量・漏れ)と経時変化の確認が重要です。評価項目は化粧品サンプル段階で見るべき項目で整理しています。

Q. 開発支援費用はリピート時にも発生しますか? A. 同一製品のリピート発注やマイナーチェンジで再発生することはありません。なお、基本調達代行手数料は商品代金の12%(14,400円未満は一律7,200円)で、本開発支援手数料とは別に、商品代金に対して発生します。詳細は料金体系・お支払いをご確認ください。

まとめ

  • 化粧品OEMは処方・容器・外装・検品・輸送の5工程を1本の線として設計する
  • 工程2・3は工程1と並行して進める。直列にすると期間が延びる
  • 各工程に「確定日」と「成果物」を決めておくと、後戻りが激減する

著者について

itsushou(GAMU 中国OEM・商品開発担当) 中国での商品開発・OEM生産・工場との調整業務に携わり、実務経験をもとに中国OEMに関する情報を発信しています。

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